2022.07.11
Galerie CAMERA OBSCURA
Galerie Camera Obscuraのディレクター・Didier Brousseは1983年からパリでシルバープリントとプラチナプリントの写真工房を運営し、多くの写真家の作品すなわちプリント作成を担っていた。この工房を母体にし1993年から妻も加わって写真のアート性をさらに追求するため、作品発表の場ギャラリーCamera Obscura をパリ14区のダゲール通り地区に開設し、年6回のスタンスで展覧会を企画した。同時期、1996年にはLa Maison Européenne de la Photographie (ヨーロッパ写真美術館) が開館し、その翌年にはフォトフェア・PARIS-PHOTOがルーブル美術館内で幕を上げ、俄かにパリは写真が主役の座を占める町となった。
このような背景の中で、ル・コルビュジェの建築を光と影の構築美で撮らえたモノクロ作品『ルシアン・エルヴェ展』をギャラリーのスタートに開催し、続いて、移り行くモードの儚い美しさとその空気感を永久にプラチナプリントで和紙にとどめた『パオロ・ロヴェルシ展』を開き、新聞や雑誌メディアで好評を得る。さらに、北の地フィンランドから世界の果てまで旅をし思考し、人々の静かな暮らしや寓話の世界を連想させる動物達の生、そして生きるもの全てを網羅する自然の姿を、レンブラントの絵のような採光で撮らえた美しい職人技のプリント作品『ペンティ・サマラッティ展』で広く観衆を魅了する。
2003年同じ14区のラスパイユ大通りにギャラリーを移転し、雪の白の微妙な階調も微風も撮らえる風景写真の旗手マイケル・ケンナ、今や伝説とも言えるポラロイドの偶発性を自らの感覚表現とし、モードも花も鳥もオブジェも全て比類なく美しく自分の写真としてしまうサラ・ムーン、2016年にポンピドーセンターで開催された’60年代のポエムとアート展『Beat Generation』を代表した詩的な写真家ベルナール・プロスなどetc. 個性溢れる作品展を続ける。中でも植田正治、石元泰博、川田喜久治、山本昌男、新井卓など、近代から今日までの日本の写真家たちの異才な展覧会はいずれも大きな注目を浴びる。韓国のコンテンポラリー作家ボンチャン・クーとニューヨークで制作を続けるジュンジン・リーの東洋の美意識と大陸的な力強さが相まった作品展も人気を得る。
今年で28年目を迎えるギャラリーは、フランスヒューマニズムを代表する写真家の一人ウィリー・ロニスのクラシックなモノクロ写真から、多種多様な素材やテクノロジーを駆使して制作するコンテンポラリー作家のパトリック・タベルナやジャン-フランソワ・スピリシゴ、そして先に述べた作家も含めて総勢25名余りの作品を、これからも同じ観点と同じ精神でディレクションし続けていきたいと考えている。